オリンピックへ出るだけじゃ意味がない!

白うさぎ

2007年08月27日 22:34

今日昼休みにネットでニュースなど見ていたら、こんな記事を見つけた。
産経新聞東京本社運動部の只木信昭記者の記事だ。ちょっと長いが引用してみる。

『がんばれ! 全日本女子バレー。ほんと頼むよ』


「さて、大会について、とか、現在の全日本について、あちこちで批判的な書き込みを見かけますねえ。的を射ていると思わされるものも多く、勉強になります。特に、セッターに関する批判。たしかに、これについては現場でも少し気になっていて、知り合いといろいろ話し合ったりしていました。

 主将の竹下は159cmと、非常に小さい選手です。それが前衛に回ると、どうしてもブロックの穴になる。それでも彼女は、時にものすごいブロックシャットを決めてくれもするのですが、はやりハンディであることは間違いない。また身長が低い分、ハンドリングの位置も低くなるから、トスが長くなり、相手に時間的余裕を与えてしまうという指摘ももっともです。竹下の闘志と技術自体は世界トップレベルだと私は思っていますが、やはり身長が低いというのは、セッターにとっても出発点から不利ということは否めません。

 ところが、今大会を通じて感じたセッターの問題は、それだけではありませんでした。

 まず、竹下のトス自体が、あまりに単調になっていたこと。サーブレシーブがきれいに入っても、ほとんど荒木、庄司のブロードに持って行くから、はじめは決まっていても、すぐに簡単にブロックされるようになる。センターをAに跳ばせてのレフト高橋の平行…は、かなり効果率が高かったと思いますが、これ以外に「これは決まる」と思えるコンビはほとんどなかった気がします。後は栗原のレフトオープンとバックアタック頼み。だから栗原が欠場した試合はスパイクが全然決まらなかった。栗原は1本だけ、右で時間差に入ったプレーもありました。後で栗原に聞いたら「パイオニアでもやっているし、別に違和感はない」といっていましたが、だったらなんでもっと多用しないのかと思わされました。

 あと、おそらくはデータで竹下のトスのパターンは完全に読まれているのでしょうね。ボニッタ君が監督になったポーランド戦は特に顕著でしたからね。私はテレビは見ていない(現場にいると基本的に見ていられない)のですが、見た人によると、あんまり簡単に日本の攻撃がブロックで止まるから、ポーランドの選手がニヤついていたとか。以前から日本はポーランドに分がよくて、大事な大会ではほとんど勝っていたのですがねえ。ポーランド自体は相変わらずミスが多く、そんなに変わったとは思えないだけに、データ負けという感は強いですね。

 で、それならワンポイントでセッターを代えたら?という疑問は、当然生じます。しかし柳本監督は一度もそれをしなかった。代えるとなると、板橋しかいないのですが…。どうも監督には板橋を使うという意識がないのかもしれない。そこまで突っ込んだことは監督に聞けていないので、この辺の結論を出すわけにはいきませんが。

 そもそもアテネ五輪後、北京へ向けて最初に柳本全日本が招集されたとき、私の興味はセッターにありました。2003年の就任後、アテネまでは時間がないので竹下でいくが、北京へ向けては若手を育てるというグランドデザインを、監督自身も話していたからです。

 で、北京へ向けての再出発で、当面は竹下でいき、若いのが育ったら竹下と競わせる、と。それはいいんだけど、誰を育てるのかと見渡すと、木村しかいない。その後、実際に木村をセッターとしてコートに立たせもしたし、「3セッター制」を標榜して高橋翠を入れたこともあったわけですが、結局実を結ばないまま。そりゃ、いかに天才・木村といえど、全日本だけでたまにトス上げるだけでセッターとして力がつくはずもないですよ。今となっては、木村をセッターにしたら攻撃力とサーブレシーブの枚数が減ってしまうので、とてもじゃないけど無理でしょう。

 本当なら、もっと早い段階で、たとえば橋本とか大山妹とか、若くて高くて能力のありそうなセッターを入れて競わせる形にすればよかったんでしょうけどねえ。センターはいろいろと若いのを試して、それなりに成果も出ているわけですが、セッターは全然です。

 まあ、去年の世界選手権とか、結果を求められる大会で若いセッターに任せて惨敗したら責任論も出たかも知れません。でも、将来を見据えて若手を出しての結果なら、少なくとも私は擁護する原稿を書いたとは思いますが。今回のWGP(それと今度のアジア選手権)が最後のチャンスだったかも知れませんが、五輪出場権獲得を目指すと公言しているワールドカップまで2カ月となった現時点で、竹下以外にセッターを任せることは、もうできないでしょうね。」『証城寺の夜』イザ!より


こういった記事は、はっきり言ってバレーボールの専門誌でもお目にかかれないし、もちろんスポーツ雑誌でもとりあげられない。しかしこういう意見がもっと出てこないと、本当に日本のバレーボール界はダメになってしまう!と白うさぎは本気で思っている。
だってバレーの専門誌は基本的に提灯記事ばかりで、批評が少ないし、硬派なスポーツ雑誌にとっては、バレーボールってアイドルが前座をつとめる「感動大安売り興行」としか思われていないのではないか?と感じる時がある。

例えばサッカーの日本代表を見て欲しい。
鳴り物入りで代表監督に推戴されたイビツァ・オシム監督だが、就任当初こそ「オシム語録」だの散々持ち上げられたものの、アジアカップで4位という無残な結果に終わるや、「なぜ辞任しないのか?」「協会は責任をなぜとらない?」「このままでいいのか?」と批判のオンパレードだ。
もちろん就任当初から批判的な目で見ていたライターもいるし、全ての人が掌を返すような対応をした訳じゃないが、負けたらたたかれるのは当たり前視聴率のためにアオリまくるTV局と違って、まだ健全な批判精神がサッカー界にはあるといえる。

ところが、バレーボールは負けても「まだ次がある」、予選突破が困難になっても「まだ望みはある」、順位が絶望的になってさえ「奇跡を起こせ!」って、起こるわけないやろっ

専門の記者が言うまでもなく、今の全日本女子はダメだ今のままなら秋のワールドカップでオリンピックの出場権をとるなど100%不可能だ。ワールドカップを独占放映するのは、只木記者には申し訳ないが、産経新聞と同系列のフジテレビだが、いくらTV局にアオられても決して皆さん惑わされないように!

文中で只木記者が指摘するように、今の全日本女子の最大の弱点は、「世界最小・最強セッター」とTV局にニックネームをつけられた竹下選手の低身長だ。
159㎝の低身長ながら、しかも一時バレーボールを引退し、ハローワーク通いまでした竹下選手には本当に酷な話だが、もう限界だと思う。
これは本人の能力だけでなく、周囲の選手の力との相関関係で、低身長セッターを活かせるだけのチーム構成になっていないからだ。現代バレーボールは、とにかく身長が高い方が有利なスポーツになってしまっていて、その中であえて低身長セッターで勝負しようというのだから、ブロックが弱くても堅実なレシーブからの多彩な攻撃しか活路はないはずだ。
ところが、「メグ・カナ」と騒がれた二人も、未だ全日本の屋台骨を背負うだけの実力はなく、常時試合に出て周囲を鼓舞する吉原選手みたいなベテラン選手もいない。(吉原選手なんか白うさぎより1学年上だったんだからホントにすごかった。白うさぎの同学年の男子バレー選手はほとんど引退しているのに)

日本はロシアのように190㎝オーバー(つまり白うさぎより大きい)選手に、ただ高いトスを上げときゃいいチームとは違うのだ。大山選手も栗原選手も、高いオープントスやバックアタックだけではなく、レフトの平行トスや時間差、クイックなどもこなせるようにならないと全くお話にならないのに、なぜいつになってもチームが進歩していかないのか?
また「サーブレシーブがきれいに入っても、ほとんど荒木、庄司のブロードに持って行くから、はじめは決まっていても、すぐに簡単にブロックされるようになる。」も気になる。シドニーオリンピックの出場権を逃し、その後の世界選手権では予選落ちという、ドン底状態にあった全日本女子の攻撃も、レフトの平行かライトへのブロード攻撃のワンパターンで、なんの工夫も感じられなかった。勝てなくて当たり前である。

本番は秋だから、今は試行期間なのかも知れないが、安くないお金を払ってるファンはたまったものじゃない。
まあ、実際のところチームは手詰まりなのではないか?

日本開催の強みをいつも活かせるから、ワールドカップで出場権がとれなくても最終予選できっと勝てるだろう。しかし今のままでは期待したってオリンピックでメダルは無理。
オリンピック終了後、柳本監督は辞任するだろうけど、代わりがいない。だからこそ柳本監督のハッタリにうすうす気付きながらも今日まで来てしまったといった感じなのだろう。ひどいものだ。




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